1,2月 剪定作業
ブドウ栽培の中でも剪定作業はとても気をつかう作業である。
特にこの時期の剪定では、切り口から次第に乾燥して大事な芽を枯死させる
危険性があるため、一枝ごとに丁寧な作業を心掛けている。
今年は例年に比べ雪が少なく厳しい寒さもあまりなかったため作業がはかどった。
因みに、暖冬気味とは言え当地の極寒期は朝方マイナス8~10度まで下がり、
水道管の凍結が風物詩になっている。
3,4月 ビニール張り・新植
当地でのブドウ栽培は「簡易被覆栽培」が主流である。
「簡易被覆栽培」とは、生育期のブドウ樹に雨除け施設をつける事により、
雨による病気の蔓延を防ぎ、また完全露地に比べ農薬の散布量を減らせる
利点のある、日本のブドウ栽培に適した栽培方法である。
毎年、この時期になるとパートさんを総動員してブドウ棚にビニールを張っていく。
春にビニールを張って、秋に取り去る作業はコスト的にも大変であるが
最近多い「ゲリラ豪雨」に備えるためには欠くべからざる作業のひとつだと考える。
なお、今年はワイン用品種と生食用品種の新植を行った。
ワイン用品種はシャルドネ、、メルロー2大品種のほか試験栽培として
ピノ・グリ
オーセロワ
シーガレーベ
ケルナー
シラー
カベルソーヴィニヨン
甲州
ベリーA アリカント
以上、10種類を新たに植栽した。
5,6月 萌芽~開花
4月からの低温が6月まで続き、今年過去9年間で最も遅い開花となった。
例年なら5月のGW明けには一斉に萌芽が始まり、すくすくと順調に生育するのだが
萌芽も開花もかなり遅れ気味であった。
最も重要な開花が遅れると、その後の結実・熟期が遅れて収量や品質に影響してくる。
特にこの2、3年は春の低温による開花の遅れが目立つ。
今年の梅雨明けは例年より早かったため6月の開花遅れによる
生育不良を十分カバーする結果になった。ブドウ栽培に梅雨は大敵であり
出来れば空梅雨になって欲しいところではあるが、日本で栽培している以上
それは無理である。最近はゲリラ豪雨も増えてきたため、ブドウ栽培にとっては
厳しい年が続いている。
結実後は比較的猛暑続きであったので、良い作柄が期待された。
特に、ワイン用ベリーAはバランスよく花ぶるいが起きて、手間をかけずとも
いいブドウに仕上がった。
9.10.11月 収穫
生食用ブドウの出来は、やや小ぶりながら色づき、糖度ともにまずまずの出来であった。
ワイン用のシャルドネ、メルローはともに猛暑のおかげできれいに熟し、いいブドウに
仕上がった。作柄は2007年に近い印象。
残念だったのは、収穫直前になりスズメバチの食害に遭った事。
以前から多少の被害はあったが、今年は大量に発生した。
ベリーAに関しては、例年よりも熟期が早まり11月中旬に収穫することができた。
過去9年間では最も品質がよく上々の作柄であった。
8月下旬 ピノ・ノワール収穫(試験栽培中/今年初めて試験醸造)
9月中旬 安芸クイーン収穫(生食)
9月下旬 シャルドネ収穫
10月上旬 ピオーネ収穫(生食)
10月中旬 メルロ収穫
11月上旬 マスカットベリーA収穫
【メルロ】
例年なら12月初旬から中旬にかけてベリーAの収穫を行うが、今年は早く片付いた
ため、仮剪定をおこなう。
総括
春の低温により初期成育は芳しく無かったものの、梅雨明けが早かった事とその後の
猛暑により品質は例年に比べどの品種も良かった。特にベリーAについては過去9年間
で最もよいブドウに仕上がった。
栽培責任者 大福貴史